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2022.07.05 その他

視野の異常と安全運転

自動車の運転においては、良好な視力だけでなく十分な視野も大切です。視力とは物の形状などを認識する力であり、視野は眼を動かさず見える範囲のことです。                                    運転中は視野で信号機、他の車、歩行者などの存在や動きを察知して敵宜、目を動かして対象物の詳細を確認しています。もしも視野に異常があれば、周囲の交通状況を的確に把握できなくなり、誤った運転操作をしてしまうおそれがあります。                    

1.視野に異常をきたす疾患

視野に異常をきたす疾患の例として、「緑内障」「網膜色素変性症」があげられます。日本人の視覚障害の原因疾患のうち4割以上をこの2つの疾患が占めています。

①緑内障                                                       眼圧の上昇等により眼の奥の視神経が傷つき、視野欠損、視野狭窄(しやきょうさく)などの症状が現れる疾患です。加齢に伴い患者数は増加し、40歳以上の日本人で5%と言われています。傷んだ視神経は元に戻らないため、治療は症状の進行を抑えることが目的となります。                         患者数が多いため、日本人の失明原因の第1位になっていますが、失明率はかなり低く、早期に発見し、適切な治療を継続すれば失明に至ることは殆どありません。

②網膜色素変性症                                                    遺伝性の疾患で、夜盲(暗い場所で見えにくい)や視野狭窄などの症状が現れる疾患です。日本人の発症頻度は4,000~8,000人に1人と言われています。厚生労働省が指定する難病の一つで根本的な治療法がなく、治療は症状を和らげるなどの対症療法になります。症状の進行の速さには個人差がありますが、眼科疾患の中では症状の進行が遅い疾患です。

2.緑内障と運転への影響

患者数が多いといわれる緑内障について、運転への影響を考えてみましょう。                                                                    緑内障の初期・中期の場合、視野欠損や視野狭窄の症状は自覚しにくいという傾向があります。                      緑内障患者の約90%が無自覚・未治療であるという調査報告もあり、自覚しにくい主な要因として、以下があげられます。

・症状が時間をかけて徐々に進行するため、見え方の変化に気づきにくい。                         ・症状がかなり進行しても、中心視野は保たれている場合が多い。                               ・片眼の視野に欠損部分(見えていないところ)が生じても、他眼がその欠損部分を補ってしまう。

初期・中期では、視野欠損や視野狭窄の症状が運転に与える影響は小さいかもしれませんが、その症状を自覚しないまま運転していると、そのうち、症状が進行してしまい、赤信号の先の青信号は見えるが、赤信号や歩行者はみえていないなどのように、赤信号や横断中の歩行者を見落としてしまうことがあるかもしれません。

症状を自覚しにくいということは、症状の進行による運転リスクの高まりにも自覚しにくいということにつながります。このため、運転者は自分の眼の健康状態の把握に努め、もし視野に異常がみつかった場合は、視野の状態をきちんと理解して安全運転に徹することが大切です。

3.安全運転を続けるために

視野に異常が見つかったからといって、直ちに運転ができなくなるわけではありません。自分の弱点として捉えて安全運転を心がければむしろ交通事故を回避できる可能性が高まるかもしれません。

また、緑内障の場合、失った視野を元に戻す事は困難ですが、早期発見と治療継続により症状の進行を遅らせることができます。

年に一度は眼科検診を受診するなど、眼の健康状態にも注意を払い運転寿命を延伸させましょう。